お客様からよく、「サイトの離脱率はどのくらいが適切ですか?」や「ECサイトの購入率はどの程度が理想?」といったご質問をいただきます。
業界や商材が異なる場合、数値を単純に比較することは難しいものです。同じ業界であっても、提供する具体的なサービスやターゲットとする顧客層が違えば、数値をそのまま参考にするのは適切ではありません。
しかし、業界の平均的な数値を把握することで、自社サイトのどの部分を改善すべきかが見えてくるでしょう。
GA4(Google アナリティクス 4)のベンチマーク機能を活用すれば、業界平均や競合他社との比較分析が簡単に行えます。本記事では、このベンチマーク機能の使い方と活用法をわかりやすくご紹介します。
目次
GA4ベンチマーク機能とは?
ベンチマークは、自社と同業他社のビジネス パフォーマンスを比較するのに役立つ指標です。ベンチマークのデータを参照することで、自社のビジネスの強みと弱みを把握し、成果を高めるための対策を講じることが可能になります。
ベンチマークに使用されるお客様のデータは暗号化されて保護され、プライバシーが守られた状態で集計されます。これにより、お客様のデータを保護しながら、自社のビジネスパフォーマンスを業界標準と安全に比較することができます。また、ベンチマークデータは24時間ごとに更新されます。
GA4ベンチマーク機能の活用手順
それでは、GA4ベンチマーク機能の活用手順を説明します。
ベンチマークを利用するための前提条件
Google アナリティクスでベンチマークデータを利用するには、プロパティの「管理」 > 「アカウント設定」の「アカウントの詳細」で、「モデリングのためのデータ提供とビジネス分析情報」の設定を有効にする必要があります。
STEP1:「ホーム」の「概要カード」にある指標から「ベンチマーク」カテゴリの指標を選ぶ
ベンチマークで利用できる指標は、GA4のすべての指標ではなく、以下の指標のみです。
集客 | 新規ユーザー率 |
エンゲージメント | セッションあたりの平均エンゲージメント時間 ユーザーあたりの平均エンゲージメント時間 平均セッション継続時間 エンゲージメント率 エンゲージメント セッション数(1 ユーザーあたり) ユーザーあたりのイベント数 セッションあたりのイベント数 セッション キーイベント率 ユーザーあたりのセッション数 ユーザー キーイベント率 セッションあたりのページビュー数 ユーザーあたりのビュー |
維持率 | 直帰率 1 日のアクティブ ユーザー数 / 1 か月のアクティブ ユーザー数(DAU / MAU) 1 日のアクティブ ユーザー数 / 1 週間のアクティブ ユーザー数(DAU / WAU) 1 週間のアクティブ ユーザー数 / 1 か月のアクティブ ユーザー数(WAU / MAU) |
収益化 | カートに追加した回数(ユーザーあたり) ユーザーあたりの平均収益額(ARPU) 有料ユーザーごとの平均収益(ARPPU) ユーザーあたりの平均購入収益額 決済回数(ユーザーあたり) 初回購入者率 新規ユーザーあたりの初回購入者数 月間課金アクティブ ユーザー数 / 1 日のアクティブ ユーザー数(課金 MAU / DAU) 1 週間の有料アクティブ ユーザー数 / 1 日のアクティブ ユーザー数(PWAU / DAU) 総広告収入(ユーザーあたり) 購入者あたりのトランザクション数 ユーザーあたりのトランザクション数 |
STEP2:同業他社グループを選択し、「ベンチマーク データ」をオンにする
「ベンチマーク データ」をオンにすると、概要カードに次の情報が表示されます。
・プロパティのトレンドライン(実線)
・同業他社グループの中央値(点線)
・同業他社グループの範囲(網掛け部分)
Google アナリティクスでは、ベンチマークの範囲を25パーセンタイルから75パーセンタイルまで設定しており、これに基づいて相対的なパフォーマンスを比較することで、より適切な意思決定ができます。
同業他社グループは、共通の業界特性に基づいて分類された、自社に似たビジネスのグループです。例えば、アパレル業界で事業を展開している場合は、「ショッピング」>「アパレル」の同業他社グループを選択します。
同業他社グループを変更するには、ベンチマークデータバッジを開き、「ベンチマーク対象の同業他社グループ」の下にある「同業他社グループ」ボタンをクリックします。
ベンチマーク機能を使った具体例
具体的にベンチマーク機能をどう使うかについて、2つの例を挙げて解説します。
例 | 指標 | 考察 | アクション |
A社 | 新規ユーザー率
同業他社グループの 25 パーセンタイルより低い |
類似する企業と比較して、新規ユーザーの獲得率が低い | 検索広告やFacebook広告を活用し、新規ユーザーを獲得戦略を検討する |
B社 | セッションあたりの平均エンゲージメント時間
同業他社グループの 75 パーセンタイルよりも大幅に長い |
自社のコンテンツは、ほとんどの同業他社と比べてユーザーが長く利用している | サイトのナビゲーションやインターフェースを改善し、ユーザーが目的の情報に迅速にアクセスできるようにする |
GA4ベンチマーク機能の限界と注意点
GA4ベンチマーク機能には便利な点が多い一方で、いくつかの限界や注意点も存在します。以下に、それぞれの具体的な説明をします。
限られたデータ範囲:利用者数が一定以上のデータしか表示されない
GA4ベンチマーク機能では、データが一定の規模に達した利用者のみが対象となります。
例えば、月間の訪問者数やセッション数が少ない場合、GA4は十分なデータを収集できず、信頼性の高い比較分析ができません。これにより、小規模な企業や新しいサイトの場合、業界平均との比較が難しくなる可能性があります。
業界平均の落とし穴:業界の平均が必ずしも最適解ではない場合がある
GA4のベンチマーク機能では、業界平均を提供していますが、この「業界平均」が必ずしも自社にとって最適解であるとは限りません。同じ業界でも、ビジネスモデルやターゲット市場、製品によって必要な指標や成果が異なります。
例えば、同じ家具を販売する会社でも、H社は数十万円の高級海外家具を扱い、S社は手頃な価格の家具を扱う場合は、価格帯やターゲットとなる顧客層の規模が異なります。同じ家具業界であっても、購入率や新規ユーザー数を単純に比較することはできません。業界の平均値を参考にしつつ、自社の具体的な目標や戦略に合わせてデータを分析する必要があります。
競合の完全な情報は得られない:他のツールの活用を検討しよう
GA4ベンチマーク機能は、業界内での自社の位置づけを把握するためには役立ちますが、競合の完全な情報を得ることはできません。GA4はあくまで自社と同じ業界や同業他社のデータを集計するツールであり、具体的な競合他社の詳細なデータ(例えば、特定の競合の売上や個別のマーケティング戦略など)を得ることはできません。
そのため、より詳細な競合分析を行うためには、他のツールや手法を組み合わせて使うことが重要です。例えば、競合のウェブサイト分析ツールやSNS分析ツールを利用することで、競合の具体的な行動やトレンドを把握できます。
まとめ
GA4のベンチマーク機能を活用することで、自社のパフォーマンスを業界平均や競合と簡単に比較できます。しかし、業界平均に過度に依存することなく、競合の詳細な情報を得るためには他のツールとの併用が重要です。
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