人口減少や高齢化という地域課題に対して、多くの地域自治体は「移住者を増やす」方法を考えています。移住者の増加は、文化的多様性を豊かにし、地域社会の持続可能な発展に寄与することが可能です。

本記事では、移住者に関する調査を踏まえて、参考になる地域型ポータルサイトを紹介します。地域の魅力を効果的に伝え、移住を検討する人に「ここに暮らしたい!」と思わせるためのヒントが満載です。

移住者向けの地域型ポータルサイトを作成したい自治体担当者の方にご参考いただければ幸いです。

移住を促進する地域型ポータルサイトとは

移住を促進する地域型ポータルサイトは、地方自治体や関連団体が運営し、移住や定住を検討している人々に向けて情報を提供するためのウェブサイトです。

地域型ポータルサイトは、地域の魅力を伝え、移住者のサポートを行うことで、人口減少や高齢化などの地域課題に対応することを目的としています。移住の支援制度や住まい情報、仕事・転職情報、生活環境などの内容が多いです。

地域の魅力的な情報を提供することはもちろん、移住者インタビューのような共感できる内容も多いです。地域型ポータルサイトを制作する際に、なぜ移住を考えているのか、そのきっかけなど、移住者の心理と行動を理解しないといけません。それでは、移住者に関する調査を一緒に見ていきましょう。

インサイト|移住者の調査

移住者の調査を紹介する前に、移住の形態を表す3つの概念「Iターン、Uターン、Jターン」を説明します。それぞれの違いは以下です。

Iターンは、都市部で生まれ育った人が、地方に移住して生活や仕事を始めることを指します。例えば、東京で生まれ育った人が、自然環境を求めて北海道に移住する場合です。

Uターンは、地方で生まれ育った人が一度都市部に出て、再び故郷やその近隣の地方に戻ってくることを指します。たとえば、大学や就職のために東京に出た人が、故郷の長野県に戻って生活を再開するようなケースです。

Jターンは、地方で生まれ育った人が一度都市部に出て、故郷ではなく、故郷に近い別の地方に移住することを指します。たとえば、九州出身の人が一度東京で働き、その後関西地方に移住するケースです。

これらのパターンは、それぞれ異なる理由や背景に基づいており、地方活性化や地域社会の再生において重要な概念です。

それでは、移住者に関する調査や研究から、地域に移住する人々の動機と傾向をみていきましょう。

パーソル総合研究所が2022年3月22日に公開した『地方移住に関する実態調査』と総務省の『地域への人の流れに関するデータ』によると、移住意思決定に影響する要因と地方に住むことの魅力を以下の通りにまとめました。

▼直接要因
・転職
・在宅勤務ができる
・ワークスペースの提供・通勤補助など支援がある
・移住に対して地域住民が支援的である
・移住体験など支援や補助がある

▼媒介要因
・勤務先がテレワークを許容する
・就業・起業支援がある
・住居への情報や支援・補助制度がある
・防災・医療・教育環境が充実している
・移住支援団体が丁寧に向き合ってくれる
・地域の情報発信が魅力的
・街並みの雰囲気が好みに合っている
・地域生活情報が事前に入手できる
・移住支援が丁寧、移住体験・補助制度
・仲間がいる
・魅力的な土地が割安で得られる

▼地方に住むことの魅力
・地方への移住希望者が地方在住者より地方に魅力を感じている
・8割以上移住希望者が最も魅力に感じているのは自然環境の豊かさ
・生活費の安さ、時間的余裕、広々とした居住環境等が続いている

 
人口移動には人をそこから押し出すプッシュ要因と他のまちが人を惹きつけるプル要因があります。

新型コロナウイルス感染症の拡大による在宅勤務やリモートワークの働き方改革が徐々に普及してきたことはプッシュ要因の1つだと言えます。地域の自然環境や移住体験・補助制度は移住の決定に強く影響するプル要因です。地域自治体は情報発信を積極的に行ったほうがいいですね。

次は、参考になる魅力溢れる地域支援情報サイトのデザイン事例を紹介します。

参考になる魅力溢れる地域型ポータルサイト

事例1:SuuHaa(スーハー)| 長野県の移住総合WEBメディア


画像出所:SuuHaa(スーハー)

◆ POINT ◆
長野県は、雄大な日本アルプスに囲まれた美しい山岳地帯で、登山やスキーなどアウトドアアクティビティの宝庫です。また、松本城や善光寺などの歴史的名所も多く、信州そばやりんごなど、食欲をそそるグルメも盛り沢山あります。

このサイトのファーストビューには、長野を代表する5つの写真が使用されています。白雪に覆われた山岳、雪山と青空と街の風景、夜のとばりがおりるころの水際、迫力ある伝統的な祭り、そして上へと伸びる新緑を通じて、四季折々の長野の空気を感じました。

SNSのアイコンはリンゴの形で、細部にまでこだわりがあるのも面白いです。トップページは主に「ニュース一覧」「長野で暮らす・働く・繋がる」「エリア」の三つの部分に分かれています。サイトのフッターには移住に関連する情報のサイトも紹介されています。自然と森林の中での楽しい生活に、少し冒険心が加わったような印象のサイトです。

関連サイト:ブンノナガノ – もうひとつは、長野県。理想の拠点が見つかるサイト

事例2:西伊豆 & ANGLER | このまちと暮らす釣り人になる


画像出所:西伊豆 & ANGLER

◆ POINT ◆
西伊豆は静岡県の伊豆半島の西側に位置する地域で、美しい海岸線や豊かな自然、美味しい海産物で知られています。

「西伊豆 & ANGLER」のサイトには大きな特徴が2つあります。1つ目は、通常のウェブサイトが上から下へとスクロールするのに対し、このサイトは左から右へ、そして上から下へと進み方です。サイトに訪れた人はゆっくりとテキストを読みながら、西伊豆の特別な雰囲気も感じることができますね。

2つ目は、全てのコンテンツは釣りを中心に展開されていることです。「憧れの釣り生活を満喫できる西伊豆!」といったメッセージはきっと伝わっているでしょう。フッターの夕陽が海岸線に沈む写真には釣りを楽しんだ後味が残ります。魚の活性は海水温によって大きく変わり、釣果に大きな影響を与えます。右上の温度計も1つのポイントだと言えます。

事例3:いいけん、島根県|誰もが、誰かの、たからもの。


画像出所:いいけん、島根県

◆ POINT ◆
日本の本州の西部の島根県といえば、出雲大社をはじめとする神話や伝説に彩られ、歴史的な神社仏閣が多数あるイメージがあります。

暖かい黄色を基調としたウェブサイトは、家族や友人と一緒に生活する写真が多く使われていて、とても温かい印象を与えます。サイトの構成は「島根に住む」「島根で暮らす」「島根ではたらく」の三つの部分に分かれています。

島根県に移住する理由だけでなく、移住者の視点から19の地域での暮らし方も描かれています。「いいけん、島根県」のサイトを見て、島根県は自分らしく自由に生きる場所だと感じました。

また、サイトのフッターには、移住支援制度、島根の住まい情報、イベント一覧などの具体的な関連情報もあります。しっかりとした移住支援の制度を確認できて、島根移住を考える人も安心でしょう。

関連サイト:【くらしまねっと】しまね移住情報ポータルサイト|UIターン

事例4:熊本はどう?(熊本市公式移住情報サイト)


画像出所:熊本はどう?

◆ POINT ◆
九州地方の中央に位置する熊本県は、「水の国」とも呼ばれるほど水資源が豊富な地域です。東京や大阪などの主要都市までもアクセスしやすく、豊かな歴史と美味しい食べ物で知られています。

白を基調としたシンプルでわかりやすいデザインです。熊本県移住に関する情報、熊本の紹介、はたらく、住まい、子育て・教育、暮らし・遊びなどの移住情報がとっても充実しています。
「移住者レポート」では、家庭、夫婦、単身の3つの代表例を比較し、移住前後の収入と支出の具体的な数字を示しています。このページを見ると、東京に比べて熊本の家賃が安く、快適な環境があることが一目瞭然です。熊本県は魅力的な移住先のひとつだと思いませんか?
ウェブサイトの構成が分かりやすくて、まるで教科書的のような地域型ポータルサイトと言えます。

関連サイト:熊本県移住定住ポータルサイト「KUMAMOTO LIFE」

まとめ

本記事では、地域に移住・定住したい人に焦点を当て、参考になる地域型ポータルサイトのデザイン事例を紹介しました。

地域型ポータルサイトには主に2つの役割があります。1つは、移住を検討する人に地域の魅力を十分に感じられるコンテンツを提供すること。もう1つは、彼らの不安を解消することです。また、ホームページの「かっこよさやおしゃれさ」だけでは不十分です。エンドユーザーの気持ちを想像しながら、必要な内容は何かを考え、「ここに移住したい」と共感して心を動かすことが重要ですね。

奈良の地で18年、1000以上の制作実績を持つ当社は、地域の魅力を最大限に引き出し、エンドユーザーの共感を得るためのデザインを提供します。サイトの制作やリニューアルをご検討の方は、ぜひお問い合わせください!

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