皆さんは、今年で仕事を始めて何年目になりますか?

筆者の場合、今年で社会人の5年目になります。インターンの半年を含めると、仕事の経験はちょうど5年です。
この5年を振り返ると、1年目は多くの迷いがあり、何を学ぶべきかがよく分かりませんでした。2年目には仕事をある程度理解できるようになり、徐々に自分なりの考えが増えてきました。3年目には経験が増え、2年目に考えていたことが表面的であったと気づきました。4年目には、この業界や仕事に対する全体的な理解ができてきた一方、慣れによる少しの「停滞」を感じました。そして現在の5年目、「このままで良いのだろうか?」と自問し、業界の動向と自分自身の特長を踏まえ、新しい知識を勉強し始めています。

職場は学校とは違います。学校では、学ぶべき内容が各段階で決められ、学期ごとに試験で評価も行われますが、仕事ではそうした明確な道筋がありません。自分で現状をよく評価し、今の自分がどの段階にいるのか、次の段階のために何を学ぶべきかを考える必要があります。もちろん、教育や評価の体系を整えた会社もありますが、多くの中小企業にはそのような仕組みがないため、自分自身で把握していないと、同じ職種の人とキャリアにおいて差がついてしまいます。

特にIT業界では、技術の進化が速く、市場やユーザーの変化も早いです。また、この業界では、基礎知識を学んだらすぐに現場で実践を始めることが多いため、自分自身の基準をしっかり持っていないと、知らず知らずのうちに時代に取り残されるかもしれません。

今回の記事では、筆者の経験に基づき、Web広告運用者が現状を把握しつつ、どのように自己成長を図るべきかについて述べています。この記事を読んでいるあなたがこの業界に入ったばかりの新人であれば、一つの参考にしてもらえればと思います。もし私よりも長く働いている先輩方であれば、内容の至らない点についてぜひご指導とご容赦をお願いいたします。

広告運用現場のソフトスキルとハードスキル

仕事におけるスキルは「ハードスキル」と「ソフトスキル」に分けられます。ハードスキルは、専門知識や技術、資格など、学習によって身につけられるスキルのことです。一方、ソフトスキルは、コミュニケーションや問題解決能力、思考力など、対人関係に関連するスキルを指します。

Web広告運用の分野では、ハードスキルが重要な部分です。例えば、データ分析や広告の設定といったスキルを持つことで、広告の効果を高め、顧客の利益に貢献できます。また、最新技術に対応できることがキャリアアップや他の運用者との差別化にもつながります。ソフトスキルは時間をかけて徐々に身につけることができますが、ハードスキルは短期間で習得することが可能です。このため、今回のブログでは主に「ハードスキル」に焦点を当てています。

広告運用者からスタートする3つの段階

筆者の経験から、この5年間の仕事は大きく3つの段階に分けられます。

第一段階 第二段階 第三段階
期間 ~1年 2年~3年 4年~5年
テーマ 基礎知識をコツコツ蓄積する 現場で知識とスキルを活用する 「ハードスキル」と「ソフトスキル」の相乗効果を発揮する
内容 ・専門用語の理解
・広告管理画面の設定
・入稿作業
・広告クリエイティブの作成
・データの解読と報告書の作成
・意識的にアウトプットを行う
・批判的思考(クリティカルシンキング)
・最新情報を収集する
スペシャリスト
ハイブリッド
教育者
・・・
自分に適した道を考え始めた
注意点 ぼんやりとした理解ではない 自分のスキルを正しく把握する +α(強みを伸ばす)

第一段階:基礎知識をコツコツ蓄積する

第一段階は、Web広告を運用し始めてからの最初の1年です。この時期は、先輩と一緒に案件を担当し、先輩の指導を受けながら進めることが一般的で、Web広告に関する基本的な知識や考え方を学ぶことが非常に重要な時期だと思います。具体的に学ぶ内容は以下の通りです。

・専門用語の理解
この仕事では英語の3文字略語が多く使われます。例えば、CPC(クリック単価)、CTR(クリック率)、CPA(獲得単価)などの用語を覚えておく必要があります。これらを丸暗記するのではなく、専門用語が生まれた背景と導き出す過程を理解することが重要です。そのため、「3文字の略語 → 英語の意味 → 日本語の意味」という順で学ぶと良いでしょう。

・広告管理画面の設定と入稿作業(+広告クリエイティブの作成)
広告運用者として、適切なアカウント構成を設計し、正確に広告を入稿することが求められます。また、広告管理画面でのコンバージョン計測の設定も不可欠な部分です。そのため、Googleタグマネージャー(GTM)の基本知識を理解し、「購入完了」や「資料ダウンロード完了」のようなゴールを正しく計測する方法を習得しましょう。
広告媒体の仕組みをしっかり理解していないと、適切なアカウント構成を設計することはできません。どれだけ早く正確に入稿しても、広告のパフォーマンスを実現するのは難しいです。入稿作業はあくまで「アカウント構成(アイデム)を管理画面に移す」ための手段に過ぎないことを忘れないでください。

・データの解読と報告書の作成
筆者はインターンシップから約2年間に仕事の日報を提出しないといけません。日報には、広告アカウントの運用レポートだけでなく、その日の業務内容も含まれています。日報を通じて、広告アカウントのデータを分析することができるようになり、広告アカウントを確認して検証する習慣も身につけました。また、この習慣はミスの防止や仕事の振り返りに役立ち、より良い運用につながります。

第一段階では繰り返しの作業が多いですが、広告運用の基礎をしっかり固める大切な時期なので、コツコツいきましょう!

第二段階:インプットした知識を現場で活用する

1年が経つと、さまざまな広告媒体の管理画面をかなり正確に理解できるようになります。
「Web広告運用者」としての働き方にも徐々に慣れてきますが、新たな課題が出てくるかもしれません。第一段階では基本知識の勉強が中心でしたが、次の段階ではその知識を活用して自分を成長させることが求められます。この段階で注意すべき3点は以下の通りです。

・意識的にアウトプットを行う
・批判的思考(クリティカルシンキング)
・最新情報を収集する

当時に私が直面した課題は2つありました。一つはクライアントとの折衝です。ようやく裏から表舞台に出てすこしウキウキの気持ちがありますが、順調とは言えません…第一段階でやっと覚えた専門用語も、今では疑問を持たずにすぐに口にできるようになりました。しかし、あなたが「当たり前」と思って使っている言葉に対してクライアントはまったく理解されないです。

もう一つは、インターン生にフィードバックをしたり、新人と一緒に仕事をし、彼らの改善点や良い点を指摘したりすることです。例えば、なぜそのように調整するのか、調整後にどの指標を確認すべきかといったことを説明しないといけません。特に新卒や学生の方々は好奇心が強く、わからないことはすぐに質問してきます。そのため、入社2年目や3年目の自分にとって、彼らからの質問は大きな挑戦でした。

クライアントの疑問を解消するための最も効果的な方法は、例え話を使うことです。新人の疑問に答える際には、媒体が公開した一次情報を用いて説明すると良いでしょう。そうすることで、彼らも正しい情報源から広告媒体の仕組みを根本的に理解する習慣が身につきます。

前述したように、この段階では同じリスティング広告であっても、Google広告とYahoo!広告では利用者や特徴が異なることを理解したあなたは、クライアントの目標や予算に基づいて、それぞれの媒体の利点と欠点を考慮し、適切なプランニングと予算配分ができると思います。あなたの視野は「広告媒体の仕組みと機能」から、どのように複数の広告媒体を組み合わせるかへと広がりました。

第一段階のように自分が正しいのか不安だった時期とは違い、他者の意見や自分の知識を客観的に把握できるようになりましたよね。これは、第一段階の自分や学んだ知識を見直す貴重な機会です。判断を下す前に、「これは本当に最適な解決策ですか?」と自問自答していきましょう!また、広告媒体の機能は常に更新されるため、最新情報の収集を忘れないでくださいね。

第三段階:「ハードスキル」と「ソフトスキル」の相乗効果を発揮する

この仕事が4年目に入ると、筆者の同期や同僚はさまざまな方向性を選び始めます。
例えば、クライアントとのやり取りが好きになった人は営業の道に進むことがあり、自分の運用スキルを向上させながら新人に知識を伝えたい人は管理職を目指します。また、特定の広告媒体に適性を感じて媒体側に転向する人や、特定の業界での専門性を深めるためにインハウスのマーケターを選ぶ人もいます。さらに、統計やプログラミングを学び、専門家を目指す人もいます。

どの道を選んでも問題ありませんが、重要なのは常に新たな目標を設定することです。また、この段階では慣れが出てくるかもしれません。業務の重要度と緊急度を区別できるあなたは、重大なミスを起こす可能性は低いですが、同じ施策を繰り返すと成長スピードや学びの量が激減することに注意する必要があります。

この段階は「ハードスキル」と「ソフトスキル」の相乗効果を発揮できる重要な時期です。例えば、広告効果を判断する際、CPAだけでなくクライアントの本質の目的も考慮し、ROASやROIの目標設定が必要かどうかを判断します。また、検索クエリを確認して、キーワードを追加するか除外するかを即座に判断できるだけでなく、エンドユーザーのニーズをビジネスチャンスとして捉えることも可能になります。クライアントと同じ視点に立って、効果的かつ現実的な提案ができる広告運用者は貴重ではないでしょうか。

最後に、これらの段階には明確な境界線がなく、相互に重なり合っています。第2段階や第3段階に進んでも運用の悩みはない、第1段階で知識や思考能力を鍛えることができないわけではありません。以上の段分けは筆者の経験に基づいたモデルであり、参考にしていただければと思います。

広告運用者のキャリアマップについて

広告運用者の仕事内容と求められるスキルについては別の記事で説明しますが、ここでは自分なりのスキルマップに関する自分の考えを述べたいと思います。

「なんとなく」で理解したり行動したりしないこと

上記の3つの段階で必要な時間はあくまで目安であり、必ずしも同じ期間がかかるわけではありません。人それぞれ育ってきた環境が異なるため、理解や考え方も違い、進むスピードも様々です。他の人が1年で自分の2年分の成果を上げているのを見て焦ることもあるかもしれませんが、自分のペースで進むことも大切です。

ただし、重要なのは広告媒体の仕組みをしっかり理解し、各施策の背景や目的をよく考えることです。「なんとなく」で理解したり対応したりせず、明確な目的を持って行動することで、次に進むべき道が自然と見えてくるはずです。

人には得意・不得意がある

広告運用は一見専門的な仕事に見えますが、実際には幅広いスキルが求められます。例えば、LPの改善提案を行ったり、Googleアナリティクス(GA4)のデータを分析したりと、広告運用以外の知識や技術を求められる場合は多いです。しかし、限られた時間とエネルギーの中で、すべての分野で専門家レベルに到達するのは難しいでしょう。

誰にも得意な分野と不得意な分野があり、不得意な部分を他人の得意な部分と比べると、ストレスが溜まってしまいます。不得意なことを放置するのも良くありません。不得意な分野が成長の最低ラインを決める一方、得意な分野は仕事の楽しさにも影響を与えるからです。

筆者にとって、日本語で完璧に自分の意思を伝えるのは苦手な部分ですが、練習を通じて顧客の要望を正確に理解し、確実に対応できるように頑張ります。無理に母国語レベルを求めるのではなく、自分のペースで上達すれば良いと考えています。もちろん、10年先や20年先の目標を持つことは大切ですが、今の自分に短期間で達成できないような目標を課すと、逆に意欲が削がれてしまいます。

主体的な学びを確実に行動に、正しい方向へ

先ほど述べたように、人々の興味や得意な分野は異なります。例えば、EC広告に強い広告運用者になったり、SNS広告運用の専門家になったりすることができます。広告運用という職種には多くの発展の方向性があります。どんな分野でも構いません。自分に合った好きな分野を把握し、継続的に学びながらスキルを向上させることが重要です。

最後に、広告運用者としてクライアントとエンドユーザーの間の橋渡し役の役割を忘れないでください。スキルアップはその目標を達成するための手段に過ぎません。いくらスキルが高くても、実際の成果(ビジネスの収益)をもたらさなければ意味がありません。したがって、どんな時でもクライアントとユーザーの視点に立って問題を考えることが重要です。そのためには、主体的に知識をインプットし、確実に行動に移し、自分に合った道(正しい方向)に進むようにしましょう。

筆者の短い5年間の仕事の中で、AI技術と自動化の進展に伴い、広告媒体には新機能が増えてきました。こうした変化のおかげで、手動での細かい調整や広告レポート作成の時間が大幅に短縮されました。仕事や業界についての理解も深めつつ、新しい分野にチャレンジできる時間が増えました。時代の波の中で生き残るために最も必要なのは、常に学び続け、確実な行動をとることだと思います。

最後の余談

外国人としてネット広告の分野からスタートしたことを幸運に思います。データ分析を通じてユーザーを洞察することにおいては、言語によって大きな差が生じることは少ないからです。
言語化する力や市場ニーズを察知する力については、自分にはまだまだ課題がありますが、これからも確実にスキルアップしたいと思います。新人と比べれば広告運用の経験は少し多いですが、業界のベテランと比べると、まだ足りない部分が多いと感じています。広告運用の初心者が遠回りをしないように、このブログを書きました。

また、キャリアでも生活でも、絶えず見直しを重ねることが大切だと思います。自分で選んだ道だからこそ後悔せず、努力すれば悔いも残りません。上記で述べたスキルだけでなく、強い意志やポジティブな姿勢といったソフトスキルも大事です。
広告運用者は、投資を管理するトレーダーに少し似た部分があり、クライアントの資金と期待を背負い、明確な目標(KPI)があるため、決して楽な仕事ではありません。施策を行った結果が良くなっていくときの喜びは、言葉にできないほど大きいものです。

もしあなたがこの業界に入ったばかりの新人、またはWeb広告を独学している方であれば、このブログが少しでも役に立てば嬉しく思います。私が最初の仕事に就いたとき、部長が言ってくれた「失敗は一度きりだ。失敗を恐れるな。」という言葉を今でも覚えています。初心を忘れずに共に頑張りましょう!

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